「TAKESHIS'」(ねたばれあるかも)

一部で難解とか、わけわからないとかいう評判をきく北野武の新作『TAKESHIS'』を観て来ました。前作『座頭市』が封切り当時は超満員だったのに対し、今回はガラガラ。なんだか難しそう、失敗作らしいなんてうわさが広がってるせいでしょうか??でもね、今作、
めっちゃくちゃ面白いです!!
一言でいえば夢落ちの話で、ビートたけし北野武の対峙=自分の内面を描いているとみせつつ、実は撮りたいと思った画(え)を撮れるだけ撮った作品といってもいいでしょうか。例えば、京野ことみが砂浜でサッカーボールを使って新体操(?)をはじめる画面がなかなか素敵なのですが、ストーリー考える前にまずこの画が浮かんだんだろうなあと思わせるし、いつもの北野映画のスタイリッシュな画面の刻み方をあえてはずしてくるやり方とかいろいろとやりたかったことをそれが出来る枠組みを巧妙に作って思う存分やっているという感じです。「Dolls」では3つの別の話をつながり乞食を全編に登場させて無理やり一つの物語に仕立てあげていましたが、今回は、たけしVS武というちょっと私小説的な題材という枠組みを作って、公に話題を提供しつつ、やりたいことをやってみせたという感じです。ですから、「ねえ、私を見て!」というような自己愛映画ではなくて、あくまでもエンターティンメントの面白さに溢れています。
その結果、作品は難解というよりは痛快!になって、まるで、ゲームセンターでいろんなゲームを大騒ぎでやってるような楽しい喧騒ぶりなのです。死んだはずの人間がまたリセットして出てきたり、役柄が微妙にチェンジしてる感じは、まさにゲーム感覚。でもこの作品を一言で表現すると壮大な"モグラたたき映画"というのがぴったりです。機関銃ぶっぱなして何度も倒れても、またのうのうと顔だしてくるモグラ。それはやがてスピードを増し、叩いてるほうはだんだん意地みたいになってパニックになっていく、まさにそんな感じ。ベンツに乗った面々が、武のぶっぱなした銃にたいして、顔引っ込めたり、また出したりする画(え)はモグラたたきそのもの。モグラたたきって自分でやるのも楽しいけど、見てる分にも楽しいんですよね。しかもその上に全編に不穏ともいうべき空気が流れている。どんなにふざけていても空気は不穏なんです。
北野作品というのは一作、一作、物凄くコンセプチュアルに作られていて、過去のイメージのリセットをこれまでもいくつかやってるんですが、今回この作品をやったことで、次はまたなんでも来いの土壌が出来たといってもいいでしょうか。早くも13作目が楽しみになってきました。