「檸檬のころ」/豊島ミホ(幻冬舎)
- 作者: 豊島ミホ
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2005/03
- メディア: 単行本
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と作者のあとがきにあるように、ある東北地方の進学校”北校”を舞台に、そこに通う普通の高校生、卒業生、学校近くの下宿屋の娘などを描いた連作短編だ。第一話の「タンポポのわたげみたいだね」は、”女子二人もの”で、仲の良かった女の子が、二年になって、同じ電車に乗らなくリ始める。保健室登校が増え始める彼女。いつも彼女のためにとっている電車の隣の席にある日、一人の少年が、自分がそこにおさまりたいんだと告白してくる。それを受け入れる少女。そして、翌日、少女と少年の前に現れる友人・・・
ちょっと胸がちくちくするような痛い感情と、爽やかな強さが混在する物語。その他の作品も地味ではあるものの、なかなか魅力的な人物が登場して、恋に人生に悩む姿が、瑞々しく描かれている。
これはちょっと昔、80年代の少女漫画全盛期に少女漫画で描かれた世界ではなかろうか? そういえば、当時の少女漫画について”本来なら小説がする役割りを少女漫画がになっている”と評した文章を見た気がするのだが。今の少女漫画で、こうした微妙な感情を描いてみせるものといえば、西炯子の「STAY」シリーズくらいしか思い浮かばない。今、こうした少年少女の日常の機微を描くものは、確実に減ってきている気がする。
逆にいうと、また小説にその役割りが戻ってきたともいえるのかもしれない。作者には是非ともこの路線を続けてほしいものだ。