「岸辺のふたり」


この作品はオランダのマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督のアニメーション作品で、上映時間はわずか8分。それに二つの短編アニメがついての料金800円のロードショー公開なのだが、この料金が高いかどうかというと、決して高くないといえる。なにしろ、わずか8分しかないこのアニメーションがあまりにも素晴らしいから! 父と幼い娘が自転車を漕いでいるシーンから始まるのだが、父は岸辺からボートにのって少女を置いて行ってしまう。その後自転車にのって、岸辺を訪ね続ける少女が描かれ、様々な季節の中で、長い長い年月をそのシチュエーションのみで描き続ける。坂道登るのに一生懸命だった少女が、いつしか簡単にそこをのぼっている姿、突風の中、疾走する少女、後ろに伸びた長い影、やがて少女の成長にともなって、自転車が二人乗りになり、2人が4人になり、そして最後はまた一人になり・・・。実にシンプルな絵柄で、かつ繊細なタッチで描かれるその世界に観た人は感情を揺さぶられずにはいられないだろう。映画を観終わってからためらわずDVDを買ってしまった。併映の短編、「お坊さんと魚」は、僧院の近くの貯水池に魚が泳いでいるのをみつけたお坊さんが執拗に魚を捕まえようとする作品なのだが、これは水面にうつるお坊さんと魚を描くことが目的と思える面白い実験作。影の描き方がとても面白い。
テアトル梅田でモーニング、レイトショー公開中。