「僕と先輩のマジカルライフ」(はやみねかおる/角川書店)

僕と先輩のマジカル・ライフ
そのゴツボ氏が表紙画を書いている本です。はやみねかおる氏は、NHKのドラマ「ふたご探偵」の原作“名探偵夢水清志郎事件ノート”シリーズ(講談社青い鳥文庫)で有名なかた。本書は、超まじめな大学一年生の井上快人と、その幼馴染で霊感のある(「本物の霊能力者」)少女、春奈と、オカルトグッズを体にじゃらじゃらつけている大学8年生の妙な先輩の3人が、「あやかし研究会」の会員として、なぞを解いていくという作品。ゴツボ氏による表紙絵は、ど〜んとでかく春奈が描かれていて、ぼくと先輩は、とても小さく描かれている。どう考えても、この霊能力者の春奈が大活躍のお話だろうと、誰もが思うだろう。ところが、この作品のすごいところは、こんなに魅惑的な少女(だって、本物の霊能力者だよ!)がほとんど活躍しないのだ。まったくとっていいほど、活躍しない。じゃあかわりに、変人先輩が活躍するのかといえば、この方もそれなりに存在感はあるのだが、一番、目立っているのは、超まじめな井上快人の方なのである。あまりにも真面目すぎて、読んでいて気持ち悪くなってくるという、ちょっと稀なキャラなのだ。話のはじまりは、今川寮という下宿を舞台にしていて、出だしはこれはまるで「めぞん一刻」の世界だなと思わせるのだが、読んでみたら下宿者の誰よりも五代くんが超個性的であった!というまあそんな感じである。
ストーリーのほうは、北村薫らに代表される「日常の謎」に分類されるもので、なかなか面白い。
 さて、ゴツボ氏は、この本の表紙画を書くにあたって、話のディテールだけを聞いて、イラストを描いたのか? それともストーリーをすべて読んで、その上に趣味に走って、美少女をでかく描いてしまったのか? 私にとって、今最も気になる謎がこれである。