「ツインズ・エフェクト」(ねたばれしています。ご注意ください)

冒頭、ヴァンパイア・スレイヤー(始末人)のイーキン・チェンとその相棒の女性(ジョシー・ホー)が、イギリス・ウエールズの駅構内で、ヴァンパイアたちと死闘を繰り広げる。駅の構内というその広々とした空間は、上へ、上へと飛翔する香港アクションものにはうってつけの舞台背景だ。全編このシーンのモチベーションで話が続いていったら、これはとんでもない傑作になったと思われるのだが、物語はこの後、がらりと変貌をとげる。なぜならこれは香港のアイドル映画だからだ。
 主演のTWINSというのは、シャーリーン・チョイ、ジリアン・チョンの女の子二人組みのユニット名で、2001年7月マキシシングル「Twins」でデビュー。パンフによると、“香港のモーニング娘。”と称されているらしい。ははーん、それでこの映画を観にいったなって?いやいやいやいや、この映画を観るまでTwinsって知りませんでした。いやまじで。で、ですね、昨年は、t.A.T.uとも共演したり、中国でのコンサートも成功させたりと文字通り、香港のトップアイドルなんだという。映画もこの作品が3作目で、過去2作品は普通の青春映画で今回初めてアクション映画に挑戦ということらしい。
 どっちかというと、アクションには不向きなへなちょこな腰つきの二人だが、そこはジャッキー・チェンを始め、カレン・モクイーキン・チェン、アンソニー・ウオンといった大物俳優ががちっと脇をかため、二人の未熟さを補っていて、二人ともドニー・イェンの指導のもと、懸命に殺陣や、カンフーを演じてみせる。完璧なスタッフと完璧な脇役を配して、アイドルを輝かせようとする。これって、アイドル映画のもっとも正しい作り方なのではないだろうか。アイドル一人の人気にのみおんぶする、そんな企画のものが多すぎるからね。ジャッキー・チェンまでひっぱりだすというのも凄い。カメオ的というよりは、結構出番があるので、ジャッキーファンの人も観て損はないかと。
 しかも、ストーリーもエディソン・チャン(「インファナル・アフェア」でアンディ・ラウ扮するラウの青年時代を演じていた)扮するヴアンパイア世界の王子様とシャーリン・チョイが純愛するという香港映画ならではのなんでもあり世界が爆裂する。豪腕スレイヤー、イーキン・チェンですら倒せなかったヴアンパイアのボスをへなちょこ二人組みが、いかに倒すのかと言う点も説得力あるシナリオになっていて面白い。
 にしても、べとべとなメイクをさせられるわ、アクションシーンではひたすら倒れているだけだわ、とほとんど見せ場のないエディソン・チャンの扱いはどうよ!女性アイドル映画では若い男は活躍してはいかんのだろうか。
 イーキン・チェンが、半分ヴァンパイアになって、ジリアン・チョンを襲う場面、中途半端なヴァンパイアなので、若い娘を舜殺できず、ばたばたと、ひつこくおいかけるのだが、どうみても若い女性をたぶらかそうとしているようにしか見えず、イーキンがそんな役をやることはまずないので、これは貴重なシーン(?)。
 最後のエンドロールで流れる未公開シーンでは、アンソニー・ウオンに笑わせられる!