「木更津キャッツアイ日本シリーズ」

今、公式メモリアル・ブック(メディア・ファクトリー)を見てるのだが、最初は、木更津じゃなくて、西船橋とか松戸が候補だったと書いてある。結局は海も見えて、ロケしやすい木更津にきまったということらしいのだが、例えばその土地がらが、関西だったらどこにあたるんだろうと漠然と考えていた。その土地の肌触りとか、空気感が想像出来た方がなんとなくより面白いだろうと思ったからだ。するとある日、“上野樹里”ではてなキーワードをたどっていた時、どなたのなんというサイトかすっかり失念してしまい、今になってあわてて探したのだがみつけられなくて勝手な引用になってしまうので申し訳ないのだが、しかもその文章も微妙に違うと思うのだが、“(加古川出身の)上野樹里で「加古川キャッツアイ」を撮って”という一文があって、ああそうか兵庫県加古川市をイメージすりゃあいいのかと妙に納得できたのだった。
 昔、自分が神戸市の灘区に住んでいた時、加古川とその周辺に住んでいた友達数人と10日ほど北海道旅行をしたことがある。北海道のあちこちを移動する旅だったのだが、行く先々で、どこからきたのかと聞かれるわけだ。私は「神戸」と答えればすむのだが、友人たちまでもが「神戸」と答えるのである。“てめえら神戸じゃないだろう!(一緒にすんな〜)”と言うと、“だって、加古川っていってもみんなわからないからいちいち説明しなくちゃならないのがめんどくさい”と答える。しかもひどい時など、“どこからきたの?”“大阪”“大阪のどこ?”“神戸”っていう会話をやっているのである。実際、逆に北海道とか、関東の方の地名をいわれてもこっちとしてはちんぷんかんぷんなわけで、こんな会話でも普通にスルーされてしまうんである(しかし、なぜに兵庫県とはいわないのか?)。 木更津っていうのもそういうところなのだろうか? その加古川の友だちのところに遊びに行ったときは、ちょうどお祭で、みんなが祭りで高揚しているわけ。自分のところはそんな祭のかけらすらなく、いいなあこういう雰囲気もとちょっと羨ましくも思ったり、別の日は、お兄さんが、草野球のユニフォーム姿で、今、思い返すと、まさに“加古川キャッツアイ”な感じなのだった。
 無駄話が長くなったが、映画「木更津キャッツアイ日本シリーズ」を楽しく観た。ドラマでも、一話ごとに1回の表、裏という字が出て、物語が進行していったわけだけど、映画の方も、1回の表、裏、2回の表、裏、と同じような進行の仕方で進んでいって、ドラマが好きだった人間をわくわくさせる展開になっている。キャッツの5人が相変わらず、テンションあげまくり! 9回表くらいまで楽しく観ていた。…のだが、そのあたりから、まるで、昨年のペナントレースで、阪神が、巨人に8回の裏まで6点のリードをしていたのに、9回の表に藤川が打たれて、どどどどと同点に追いつかれた時とまさに同じように、この映画に対して、面白いな〜と思っていたプラス点が、どどどどどと、なくなっていったのだ。なぜかというと、キャッツの5人が漂流して、南国の島に流されるくだりから、なんだか急につまらなくなってきたのである(観ていて蟹が食べたくなったが)。それはなぜか、と考えると、キャッツの5人が木更津を離れてしまったからにほかならない。 相変わらず、テンションが高く、島を出る努力をちっともしない5人は、本当にばかで賑やかな奴等だけど、なんだか違う。これは彼らのいるべき世界ではないという思いが胸をよぎるのだった。それだけ、この物語の木更津という町は、愛すべきものになっていたのだと思う。全国の、木更津にちょっと似た町が、うちだって木更津に似てんだよね、と自慢したくなるような木更津という町。決してかっこよくはないのだけど。
 そんなことで、ちょっとがっかりしていたのだが、しかしこの映画、阪神タイガースが、巨人に追いつかれて、かろうじて同点でゲームセットにもちこんだのとは違い、やってくれたのだ。延長にはいってのさよなら勝ちを! あのごみの怪獣。これが可愛いのなんの。個人的には、「ゴーストバスターズ」でマシュマロマンを観たときのインパクトに近い。これは商品化されないのか? もうこれ観たらバカバカしすぎて、IT'S ALL RIGHTですよ。観終わったあとは、まるで宴の後って感じ。