『ホット・チック』(’02)ねたばれ感想。

制作総指揮にアダム・サンドラーロブ・シュナイダー主演の本作は、日本では未公開のビデオスルー作品。ロブ・シュナイダーっていってもよく知らないものなあ〜。
チアリーダーで、ばりばり学園のメインストリームを歩むセクシーでキュートな女子高生ジェシカ。その美貌で男性陣を手玉に取り、時として残酷に学園のはみ出し者を学校中の笑いものにするという、まあ、アメリカ学園ものの典型的な女王様タイプ。アメリカ学園映画は、大概の場合、こういうキャラは脇にまわり、さえないダメ生徒たちが活躍する物語が多いのだが、本作品ではジェシカが主役。といっても、彼女、ショッピングモールで古代の呪いの耳飾(なんじゃそりゃ!)を手にいれたことから、ガソリンスタンドを襲った強盗クライブ(ロブ・シュナイダー)と体が入れ替わってしまう。以後ジェシカは、外見はロブ・シュナイダーとして画面に登場というわけで、ロブ・シュナイダーの顔はおやじでも、心は女子高生という演技がみものになっている。ただうっとうしいだけのこのおっさんが、非常にキュートにみえてくるんだから、いや、面白い。 大林宣彦の「転校生」(この山中恒の原作小説の映像化は数知れない。よっすいーの演技も記憶に新しいところ)では、女の子が、男の体に入れ替わったとたん、めそめそしだして、変わる前よりも女々しくなっていたのに対して、こちらはさすが、学園の女王、もともと自身満々な性格のところに、男の力が加わってやな男などぶん殴ってしまう。さらに、これまで自分が行ってきた意地悪に気付かされ、本当に大切な友情を確認していく、とそんな物語だ。
 いわば「アメリカンパイ」シリーズのようなエロコメであるが、こういっちゃうと聞こえは悪いけど、この手のエロコメは、お下劣ギャグ満載ながらも基本的には、真の家族愛や、恋愛や、友情を実に真面目にとらえている作品であって、これはちょうど、映画版「クレヨンしんちゃん」が、PTAから総すかんくらいそうなギャグ連発しながらも、美しき家族愛を高らかに謳ってみせる作品だったのととてもよく似ているのだ。 親は、顔をしかめるかもしれないが、ティーンエイジャーよ、こういう作品こそを見るべきだ!
 女性の姿のジェシカを演じたレイチェル・マクアダムズは、この作品でデビューした新人のようなのだが、かなりの美形。が、なんといっても彼女の見せ場は、強盗クライブなんだけど外見はジェシカを演じた時の、品もへったくれもないいかつい演技である。スケベ心で近づいてくる男どもを容赦なく蹴り倒す。今後が実に楽しみな女優さんである。