「トリック大作戦」(DVD/文章中「キル・ビル」の内容に触れてます)

キル・ビル」が、“バカ映画”といわれているけれど、私はあまり、そうは思わなくてあれは、非常にスタイリッシュな映画だったと思う。時間の構成なども非常によくできていたし、VOL.2につなぐ映像が、ソフィー・ファタールことジュリー・ドレフュスの地獄を見た女性のなんとも形容のしがたい枯れ果てたような表情のアップが続くところなど、傷口みせられるより痛々しくてちょっと衝撃的だったし。フィンランドの特急列車の中で、寿司たべているアキ・カウリスマキの「過去のない男」の方がよっぽどバカ映画と思うが、それじゃ、“バカ映画”とはなんぞやという話になってくるので話をかえて。
 バカといえば、これほど、楽しいバカ映画を作る人はいないだろうというのが、香港のバリー・ウオン監督。10月24日に“ゴールデンハーベスト社レーベル伝説の香港映画コレクション”の一本として出たバリー・ウオン監督作「トリック大作戦」(’91原題「整蟲専家」)観賞。
 「インファナル・アフェアー」のアンディ・ラウと、「少林サッカー」のチャウ・シンチー共演の大爆笑どたばたコメディー。二枚目スター、アンディ・ラウにあんな顔やら、こんな顔やら、させて、バカなことをさせるために作られた(仕組まれた?)映画のような気がする。痒くなる粉をパンツに振り掛けられて、下半身をかきむしったり、へんな薬をのまされて、チャウ・シンチーとキスしたりとお下劣ギャク満載。なかでも、薬を飲んで、超人ハルクみたいに服がやぶけ、筋肉もりもりになって戦ったあと、薬が切れるや、シューッとしぼんでいくアンディーが最高!
 詐欺師同士のシンチー・と程東(チントン)の対決では、程東が使う、“血しぶきヘルメット”が、紐の先についているヘルメットのまわりがぎざぎさの刃で、それを振り回して、投げつけるわけなのだが、おお、これって、GOGO夕張を思い出す!ありました〜!ここにも元ネタ映画が〜!? しかも、そこからは、血しぶぎクリームというのがおちてくるおまけつき。真っ白なんですが、なんでも腐っているんだとか。
長らく日本未公開だった作品。まあ、あぶないギャグが多すぎて、一般公開や、テレビ放映は無理な作品だが、DVDって素晴らしい。絶盤になっていた古い作品や、未公開作が低価格で発売されるんだから。