「キル・ビル」(ねたばれあり)

これから見る予定のかたは、読まないでおかれるほうが良いかと思います。
 一言でいうと、゛エグイ"です。スプラッター嫌いの人にはオススメできません。これに比べると「座頭市」のR-15指定は気の毒というものです。日本刀が、゛斬る"というよりは、゛ぶった斬る"という表現がふさわしい西洋の刀のような使われ方をしているな、と思ってみていたのですが、“噴水のような血しぶき、バラバラに飛び散る手足は三隅研次監督の『子連れ狼/三途の川の乳母車』('72)に影響されている”とパンフレットにあった。しかも“『子連れ狼』は『Shogun Assassin』の題でアメリカ公開されて大ヒット。映画史研究書によると、これがスプラッター映画誕生のきっかけになったという”…ほんとかよ! 恐るべし日本映画!「日本映画専門チャンネル」で放映されても観ないでおこう…。
 前半、病院で昏睡状態のユマ・サーマンのもとに、ダリル・ハンナが看護婦になりすまして、ユマを毒殺しようとするところでは、レイ・チーホン主演の香港映画「城市特警」に出てきた滅茶苦茶怖い金髪の外国人看護婦を思い出しました。元ネタ映画として、既にとりあげられていたらごめんなさい。
 残虐非道な映画ではありますが、一連の香港映画の掟なしの無軌道ぶりにくらべると、ひどくまっとうな面もあります。前述の「城市特警」も病院でのアクションシーンがあるんですけど、香港映画には病院を舞台にしたアクションものがちらほらあって、特にチョウ・ユンファの’92年の「ハード・ボイルド」なんて、罪なき入院患者がばたばた殺されるというひどい映画で(ちなみにここでの一番の悪役が、「インファナル・アフェアー」でしぶい刑事を演じていたアンソニー・ウオン)、そういうのに、くらべると、「キル・ビル」でユマ・サーマンがぶった切るのは、みんな悪ばかり。結婚式会場で、オルガン弾きの黒人をはじめ罪の無い人を殺した悪い連中をたたき斬っているわけです。不意打ちも絶対にありませんし。意外にモラリストなんですね、タランティーノ
 今回最大の期待であった栗山千明GOGO夕張は、期待以上に美しく、妖しく、かっこよく、普通の女子高生の格好している女の子が、用心棒という設定が見事にきまっていたと思います。
 公開前から、大絶賛か、うけつけないかのどちらかに評価が二極分化する作品だろうと言われてましたが、私は、どちらかというと、“受け付けない”のほうかな。あはは。そりゃあ、種田陽平氏の青葉屋の美術設定など素晴らしいと思うし、ライトが消されて障子がブルーに輝いた中での影絵のごとくの立ち回りとかスタイリッシュでしびれたし。でもなにか、非常に趣味が近いんだけど、微妙に、好みがずれていて、近すぎるがゆえに仲良くなれない人間関係に似たものがありました。要は、スプラッターが苦手だからなんですが。
 笑えるとかいわれている、日本歌謡曲などの導入も、アキ・カウリスマキ監督の「過去のない男」で突然クレージー・ケンバンドがかかった時のインパクトと比べてしまったし。
Vol.2を観るかは、ちょと微妙。1を観終わった時は、絶対2はもう観ないと思っていたけど、こうやって感想かいていたら、気になりだしました。映画ヲタ心をくすぐる映画であることには間違いありません。ただ、Vol.2はマカロニウエスタン風といううわさもあり、よりえぐく、なってそうな予感がしますが…。