「恋は邪魔もの」(ネタバレしとります。これから観る方はご注意を)

チアーズ!」のペイトン・リード監督の最新作で、レニー・セルヴィガーとユアン・マクレガー主演の「恋は邪魔もの」をOS劇場で。
 本作は、ドリス・デイロック・ハドソンがコンビを組んだ60年代のロマンチック・コメディーのスタイルをそっくり蘇らせた作品らしい。事前にそのコンビの「夜を楽しく」「恋人よ帰れ」といった作品を観ておけば、より楽しめること間違いなしなんだろうけど、残念ながら、国内では、ソフトが出ていなくて観られない!50年代のテクニカラーのメロドラマを再現した「エデンより彼方に」も、ダグラス・サーク作品へのオマージュだったけれど、サーク作品は国内ではひとつもリリースされてなくて、観られなかったっけ。たま〜にサンテレビなどで、昼下がりに古いアメリカ映画が放映されていることがあって、たしか、ロック・ハドソンの作品もあったような記憶があるんだけど、ああいうのも、たまにチェックしてなくては駄目だと思った。まあ、めっちゃくちゃカットされまくっている代物だけれど。
 ともあれ、ケーリー・グラント作品や、MGMミュージカルなどの60年代のハリウッド映画の楽しい雰囲気を思い出してみてみよう!
 「シカゴ」でミュージカル女優顔まけのダンスと歌を披露したレニー・セルヴィガーと、「ムーランルージュ」で抜群の歌声を聴かせてくれたユアン・マクレガーが、60年代のヒロインとヒーローになりきって楽しませてくれる。メインの二人以外にも脇キャラがきっちりカップルになっているところとか、まさに“物語が終わるころには数組のカップルが出来ている”という往年のハリウッド黄金時代のおめでたいパターンだ。
 でも、この映画は決して昔を懐かしむ、レトロ映画ではなくて、60年代映画こそ新しい!という信念に似たものを感じずにはいられない。それはちょうど、日本人が小津映画を観て、全然古くないじゃん、むしろ今より進歩的!と驚く感覚に似ていると思う。 
 そして、60年代コメディー映画を全肯定した上で、ペイトン・リード監督は、現代を生きる作家からのそれらの映画に対する答えというんだろうか(?!)、さらにそこに“したたかさ”と一筋縄ではいかない“奥の深さ”をしたためて、ある意味理想の対等な男女の恋愛を描きだしてみせる!
 ちょうどトッド・ヘインズが、「エデンより彼方に」で、50年代のメロドラマを再現しつつ、真のリベラリストとなる主婦を堂々と描きだしたように!
 なんて鮮やかな現代作家たちだろう!!