ドラマ「オレンジデイズ」

今シリーズは、これと、安倍さんのドラマを観る予定。安倍さんの演技も楽しみだが、相手役が西島秀俊さんということで、隠れ西島ファンサイトとしては(は?いつから?なぜに隠れ?)非常に楽しみなのだ。「オレンジデイズ」も観る決め手になったのは、やっぱり役者さん。妻夫木君に、瑛太上野樹里ちゃんと来たら見るしかないでしょう。瑛太に関しては、「青い春」「あずみ」は観てるにもかかわらず、彼がどこに出ていたか恥ずかしながらまったく記憶にない。初めて認識するにいたったのは、「ナインソウル」の金子ノボルという強烈なキャラを演じた時だ。その役の徹底した俗物ぶりに圧倒された上に「ナインソウル」に関する文章をYAHOOで検索していたら、舞台挨拶か何かの対談だったかで瑛太がとても無愛想だったということが書かれているのがあり、それで俄然興味を持ったのだった。今回、成宮くんが演じた役を瑛太に演じて欲しかったという気もするなあ。でもって実は北川 悦吏子 作品を見るのって初めてだったりします。
 さて、肝心のお話のほうだが、初回90分とういこともあり、今どき珍しい、実にゆくりしたテンポで話は進む。一昔前のちゃらちゃらしたキャンパスライフという描き方ではなく、今の学生が、福祉や、ボランティアに興味を持ち、しかし、様々な免許、資格をとっても、就職がままならないというこの時代をしっかり描こうとしているように見えまずは好感を持った。
 妻夫木くんは、さらに好感度があがるような爽やかな青年という設定で、彼の笑顔を見ているだけでなんだか幸せな気持ちになるほんとうに稀有な俳優さんである。一方の、柴咲コウは、ハンデのある人=無垢というステレオタイプを打破しようとする設定がなされており、妻夫木君に蹴り入れるところなんて実に爽快だ。ただ、妻夫木君とハンデキャップを持つ人の組み合わせというと、どうしても「ジョゼと虎と魚たち」を思い出させ、このあと必然的に訪れるだろう妻夫木君の今の恋人と柴咲コウの三角関係が、「ジョゼ〜」での池脇千鶴上野樹里との修羅場を想起させ、また、妻夫木君は逃げ出したりしないんだろうねなんて思考が働いてしまう。見てるほうがこんな想いを抱いているということは、この作品にとってはあまりいいことではないかもしれない。ともあれ、物語はゆっくりと始まったばかり。このテンポを守って、堅実なドラマを見せていってもらいたい。

「気まぐれな唇」(ねたばれあり?)

韓国映画「気まぐれな唇」(監督:ホン・サンス)をテアトル梅田にて鑑賞。すっかり韓国映画づいてます。次回は、昨日感想を書いた「ほえる犬は噛まない」のポン・ジュノの「殺人の追憶」を観にいく予定。「オアシス」も観たいし。
 さて、本作、舞台では名の知れた俳優ギョンスが映画の仕事を降ろされ、半ばやけ気味に先輩の住むチュンチョンに旅に出る。そこで知り合ったダンサーと一夜をともにするが、彼女の情熱から逃げ去るように故郷をめざす。その途中で、出会った女性に対して、今度は彼が執拗な愛を求めるのだ、というまあざっとこんなストーリー。早い話が、酒を飲んで飲んで、ほろ酔い気分で女に誘われ、誘い、というだけの映画。なのに、なぜか滅茶苦茶面白い。主人公の着る真っ赤なTシャツと先輩の青いTシャツ、その色合いのせいか、なんだかフランス映画を観ているようだ。ちっともお洒落じゃないけど。映画の役を降ろされたギョンスが悪態をついて、監督から「人として生きるのは難しい。だが怪物にはなるな」という忠告を受けるのだけれど、彼はこれをあとあと、別の人間に繰り替えして言うことになる。ありがたい言葉もただ笑える言葉になって、しかも、その言葉をギョンスに言った監督でさえ、実は誰かに言われたことを真似しているだけじゃないのかと思わせるような、言葉の持つ意味のなさが繰り返しによって浮き上がってくる演出の妙。それは、全編にわたっていえることで、最初の女に言わなかった「愛している」という言葉をギョンスは2番目の女に繰り返すけれど、言われた女にとっては、別に重みもなにもないものだ。そうした男と女の微妙なすれ違いが画面に立ち現れていく様や、占いをしてもらっただけで、あっさりと崩れる二人の関係など、実にさらっとだが、情感たっぷりに、しかも可笑しみを込めて描く力量は相当のもの。冒頭の監督からエレベーターのボタンを押してドアをしめて逃げ去った主人公は、ラスト、重く二度と永遠に開かないような大きな扉を見てただ立たずむしかない。閉じられた扉がまるで意志の塊であるかのように私たちを切なくする。