映画雑談(第二回)『虹の女神』『幸せのスイッチ』

(出席者:chori=当サイト管理人。 chorisuke=謎のヴェールに包まれている←ごめん、また真似した。  ネタバレしております。ご注意ください。)


chori:「第一回『スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ』」に続き、第二回とまいりましょう。
chorisuke:ではまず、新しいところで『虹の女神』にいきましょうか。これは岩井俊二作品と思われがちですが、岩井氏はプロデューサーで、監督は『ニライカナイからの手紙』の熊澤尚人なんですよね。
chori:岩井氏の目がはいるだけで、こんなによくなるのかぁと思いました(笑)。
chorisuke:市原隼人のよさが『リリィ・シュシュ』以来ようやく生かされたなぁという印象です。『天使の卵』は観てないのであれがどういう感じなのかはわからないのですが。
chori:本当に清々しい空気感を漂わせていますよね〜。一方で上野樹里は相変わらず年上キャラを演じています。つまり実年齢より上の役柄ってことなんですけど。彼女はたしか16歳のときに『ジョゼと虎と魚たち』で22歳の役をやっていて、『亀は意外と速く泳ぐ』では23歳の主婦役でした。今回も、実年齢では一つ年上の蒼井優の姉役を演じてます。勿論、実年齢と重なる役柄のほうが多いんですけど。
chorisuke:背伸びした感じがなくて、どんな年代の役でも本当に自然なんですよね。今回は化粧っ気の少ないちょっとぶっきらぼうな女の子を演じていて、市原隼人が恋愛の対象に彼女を見てないっていう設定がリアルに生きている。
chori:同時期に上映の『ただ、君を愛してる』の宮崎あおいがまるで’70〜80年代の少女マンガのラブコメのヒロインのような造形をされてるのとは対照的ですよね。『ただ、君を愛してる』に関してはまた詳しく語りたいと思いますけど、話を戻して、学生時代、映画研究部に所属していて、多少なりとも8ミリ映画製作に関わっていたものとしては、涙無くして見られない設定でした〜。
chorisuke:上野樹里扮する佐藤あおいが監督、主演した8ミリ映画「THE END OF THE WORLD」がまるまる本編の一章としておさめられてるんですけども〜、こういう作りは、岩井俊二の『四月物語』をちょっと想起させますね。まあ、あれはちゃんとした劇場映画っていう設定ですから、ちょっと違うんですけど、この8ミリが題材からしていかにも学生映画って感じで。
chori:世界の終わり、っていうありがちな(笑)テーマがね〜。撮り方も、最初、キャストがクレジットされるシーンでは気付かなかったけど、あおいのお父さんが住職の役で出てたりするんですよね。大人の役には身内を引っ張ってくるっていう、そうそうそうなんだよね〜っていう懐かしい感じで。で、大概、こういった8ミリ作品とかホームムービーが映画本編に流れる時って凄く魂を揺さぶられることが多いんですけど、この作品でも、本編のこの流れで観ると、ぐっと吸い込まれるというか、見入ってしまう。で、おそらく息を呑んで観ているであろう、喪服姿の本編の登場人物までが見えてくるようなそんな気がしてくるんですね。あるいはその視点を自分が借りてでもいるような気がしてくるというか。
chorisuke:私はラストの市原くんの慟哭に涙を抑えられませんでした。小道具の使い方のうまい映画はやっぱり面白いな〜と。


chori:では上野樹里つながりで『幸せのスイッチ』にまいりましょうか。地味そうな映画なんでたいして混んでないだろうと思ってたら、年配の方々で映画館がいっぱいでびっくりしました。なんですか? ジュリー人気なんですかね??
chorisuke:ん〜〜そうなのかも。って、ジュリーと樹里って今、そのつながりに気付きました!
chori:・・・・・・・。安田真奈監督は関西自主映画界で名の通った人ですよね。『オーライ』とか観たかったんですけど、結局、見逃してしまって。で、監督は「社会の大事件」より「「個人の大事件」を描きたいと語っています。そんなふうに作られた映画なので、私が持った”にしてもあまりに規模が小さい”という感想は正しい見方ではないのかもしれません。
chorisuke:頑固おやじに反発する子供っていう設定の作品は何作か観てますが、それらの多くが、観終わって、家族って何? って非常に怒りがふつふつとわいてきたことを思えば、非常にあと味のいい作品になってはいますね。
chori:その爽やかさがいいというのはあるんだけど、別に社会を描かず、時代を描かずに個人を描いても、そこに社会性とか、時代性が出てくるのが、表現というものじゃないかと自分は思っているので、たとえば、前回取り上げた「スケバン刑事」だって、完全な娯楽映画だけど、時代性っていうのがやっぱり出てるんですよ。そういう意味で『幸せのスイッチ』はあまりに小さくまとまりすぎてるような気がしました。テンポとか役者は凄くよかったですけど、特に上野樹里が。でも、目指すところが小さいかな〜という・・・
chorisuke:あ、でも電気餅つき機が出てきてましたが〜、あれは便利そうでした。
chori:あれ、うちにもありますよ! 結構面倒でね〜。時間がかかるの。
chorisuke:お宅のはそりゃもう年代ものだからですよ。今はもう少し改良されてるんじゃないですか?
chori:大事に使ってると言ってください! つきたてはやっぱりめちゃおいしいです!
(第三回に懲りずに続く)