「小さき勇者たち GAMERA」(ネタバレしてます。これからごらんになる方はご注意ください)

私は平成ガメラシリーズが大好きなんです。なもんだから、初めてこの「小さき勇者たち GAMERA」の予告編を観た時に、そのお子様映画ぶりにかなり落胆してしまいました。またなんで子どもの方に戻しちゃうのかと。でも、夏帆ちゃんが出ているってことでそれだけを目当てに劇場に足を運びました。実は、今さらですが、夏帆ちゃん主演のドラマ「ケータイ刑事 銭形零」にはまってるんですよね。
舞台は伊勢志摩地方。磯の香りがしてくるような夏の風景がフィルムに刻まれます。地方を舞台とした子供映画としては、なかなか雰囲気がある滑り出しです。
そこで、少年、相沢透(富岡涼)が、赤い石の上にのった卵を見つける。手にとると、小さな亀が。この亀が、可愛いではないか!この顔、この歩き方、これは反則だというくらい、心持って行かれました。この可愛いのがでっかくなって、予告編で流れていたぐるぐる巻きにされてトラックで運ばれたりするシーンにつながっていくのか〜?!と思うと、まだなんのドラマもないうちから、涙が、もうダメです。すっかり作り手の術中にはまってしまってます。
その後、亀は順調に大きくなって、例のシーンも登場し、やがてジーダスという敵怪獣が現れるという展開になっていくわけですが、この映画最大の見せ場はなんといっても、逃げまどう群衆の中を逆走していく子どもたちという絵でしょう。過去の怪獣映画でも散々見られた逃げまどう人々の映像。その中での子どもといえば、逃げまどう人々の中で倒れてしまう弱者として描かれるか、あるいは逆走していったとしても、大人たちに止められてしまうのがオチだったでしょう。子どもが主人公であっても、最後はちゃんと助けてくれるものがあったのです。ところが、ここでは助けてくれる大人なんて誰も登場しません。なんとも、’00年代的だな〜と思わずにはいられません。
逃げまどう人々の流れに危なかっしくも逆走する子どもたち、やがて大人に行く手をはばまれますが、別の子どもがたすきをつなぐがごとく、赤い石をうけとって逆走していく。私はこのシーンに目頭が熱くなると同時に、この映画もまた、昨今の「カナリア」だとか、「誰もしらない」といった子どもたちを主人公にした作品の系譜で語られるものだと感じました。“もう、大人にはまかせておけない!”というのは、「ケータイ刑事」の映画版の宣伝文句ですが、まさにその通りに、無力になってしまった、全てに行き詰まった大人たちに、振り回され、踏みにじられつつ、そこで滅んではしまわずに、生き残り続けようとする子どもたちというものを描く流れが、小説にしろ、映画にしろ、確かに今、あると思うのです。
大人たちが、自分たちの役割を放棄して、子どもにたくしているだとか、あるいは子どもの未来を信じているとか、そんななあまっちょろいものではなくて、大人がこれまで作ってきた社会がもうどうにもこうにも立ちゆかず、子どもが殺されていく時代に(この表現を使うのは最近「若者殺しの時代」堀井憲一郎講談社現代新書というエッセイ?を読んだからですが)誰もが予測していなかったもの(力)が立ち上がろうとしているのではないか??  まあこのあたりのことは自分の中でも、うまくまとまっていないので、わかりにくい文章になっていると思いますが。
この「小さき勇者たち GAMERA」のガメラであるトトは、巨大化しても非常に愛くるしい顔をしていて、まあ、それは無理矢理人間の手で巨大化されたためで、体はでかいが、心は子どもなわけでして、その子どもガメラ=トトは、先代のガメラが自爆することでことを解決したのに対し、生き延びてみせるのです。それは単に子ども向きのハッピーエンドをめざしたものではなくて、必然的な結末だったように思えます。
自分の昔語りになって恐縮ですが、子どもだったころ、子どもだけで勝手にやっていた花火大会がありました。誰に言われたわけでもなく、上級生が小さい子に危なくないように気をかけることもちゃんとしていたと思います。それを親たちが、地域の行事にしてしまって、面白さが半減して、落胆したことを覚えています。
そんなことを思い出したら、子どもを主人公にして、子どもだけで物事を解決して、というこの映画は自分が子ども時代に夢みたような映画だともいえます。
でも、大人になった今、これを見ると誰も助けが来なくて全てを自分たち、子どもだけで解決しなくてはならないということは実はものすごくしんどいことなのだ、と思ってしまいます。
怪獣映画のフィールドで子どもたちの“今”を描いた見事な作品だと思います。
で、夏帆ちゃんはどうだったかって? 可愛かったですよ。ほんとに演技がうまくなってきましたね。
映画の帰りに梅田の紀伊国屋で↓を買っちゃいました。

夏帆写真集 step in 小さき勇者たち ガメラ

夏帆写真集 step in 小さき勇者たち ガメラ