2006映画事始め「キング・コング」(ネタバレあり)

オリジナルの1933年版は見てません。でも、確か、オリジナル版「キング・コング」を映画の中で観てた映画があったような・・・そうそう、ジョン・アービングの作品の映画化「サイダーハウス・ルール」(監督:ラッセ・ハルストレム)の中で孤児院で上映される映画がこれだった。この孤児院にはこのフィルムしか存在しておらず、毎回上映会のたびに子どもたちは「キング・コング」を見てるんだけど、それを凄く楽しみにしていて、でも、フィルムがいつも同じところで切れてしまって、トビー・マグワィアがフィルムをつなげなくちゃいけないというそんなシーンだった。
「ロート・オブ・ザ・リング」の監督ピーター・ジャクソンは1933年版「キング・コング」を9歳の時にテレビで見て映画監督になろうと志したという。そんなエピソードを聞くと一瞬、ピーター・ジャクソンと「サイダーハウス・ルール」の子どもたちの顔が重なってみえたりするようにも思えるのだが、そんなピーター・ジャクソンが念願かなって本格的にリメイクした作品が本作なのだった。
怒涛の3時間8分!手に汗握り、涙(号泣)あり、笑いあり、気持ち悪すぎて思わず目をそらすシーンありの空前のエンターティンメントワールド!まあ凄いです!凄い、とにかく凄い!で文章を終わらせてもいいくらい凄い!
前半は、「スクール・オブ・ロック」でおなじみのジャック・ブラック扮する“そこそこの”映画監督が自分の信念のもと映画を完成させようと強行に無人島へと船をすすませる。船上での撮影などはジャック・ブラックの映画愛溢れる映画バカぶりがいい感じなのだけれど、やがて島につくとジャック・ブラックの映画バカぶりは映画大バカぶりに変化して、どんな危険な場面でもカメラを必死で守り続ける姿がコミカルに描かれている。仲間の死よりもフィルムの損傷ぶりに焦燥する様子はある意味映画界隈の人間の本音の部分なのかもしれないなんて、ちょっと不謹慎なことを考えたりもしたのだけど、結局、この男は映画を完成することは出来ず、最後はコングを見世物にしたショーのようなものを作るのみなのだ。彼が行った行為は、観ているものを非常に憤らせるもので、ここにきて完全に悪役になってしまうのだけれど、映画は、彼が“映画を捨てた”ことでさらに彼を「堕落」したものとして描いているように思う。
ナオミ・ワッツに関しては、あれだけのひどい目にあいながら、なぜ、一つのケガもないのだろうかというそれをいっちゃやぼってものよ的つっこみをそれでもやっぱりいれたくなってしまうのだが、いや、でもこれはこれでいいのだ。ヒロインはある意味超人的な肉体が必要なのだ。そう、このヒロインは宮崎アニメのヒロインを継承したものなのだ! ってほんとにピーター・ジャクソンが宮崎アニメを参考にしたかどうかなんて根拠はまったくないのだけど、その影響はあるような気がするな〜(!?) あのティラノサウルスとともに落下するシーンなんて! ナオミ・ワッツがボードビルの女優という設定も、その身の軽さがラナとかを想像させちゃうんですよ。
しかし、もうなんといってもキング・コング様が素晴らしい表情を見せてくれて、泣ける泣ける、コングよ!お前こそ男の中の男だ!心意気だ!任侠だ!純愛だ!と叫ばずにはいられない。「美女と野獣」における「野獣」というものは「醜い」というイメージがあるとおもうのだが、どんどん観ていくうちにキング・コングがかっこよく、素敵に見えてくるのだ。みんな惚れるよ。それゆえにニューヨークに連れて来られてからの悲劇ぶりには号泣せずにはいられない。すっかりしっかり作り手の手中にはまりまくった3時間8分だった。
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