「ライフ・アクアティック」

これほどまでにも観ながら、にこにこと頬が緩んでくる映画はなかった。今はとにかくこの作品を絶賛したい気持ちで一杯!「天才マックスの世界」('98日本ではビデオスルー)、「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」('01)に続くウェス・アンダーソン監督の最新作。「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」は、すぐに好きになった。テネンバウムズ家の長女マーゴが、十二歳の時、家出して公立図書館のアフリカ棟で寝泊りしたというエピソードで、もうノックアウト。これって「クローディアの秘密」じゃないか。あれは、確か、博物館での寝泊りで、噴水でシャワーを浴びたりしていたお話しだったけど、この児童書の世界に私、子供のころ、どんなに憧れたことか・・・。一方、この「ライフ・アクアティック」は、少年科学雑誌の世界なのだ。「ライフ・アクアティク」の調査船ベラフォンテ号の各部屋が断面図で紹介されるとき、思わず、「わお!」と声を出しそうになる。そうした子供のころの夢がきらきらっと輝いてる作品なのだ。最も、主人公は子供ではなく、立派な大人なので、そうした少年少女の夢は一方でどこか物哀しいストーリーとなって立ち上がってくるのだけれど。しかし、その物哀しさに小さく集約されていく話しではなく、突然、息のいい活劇が始まって、ビル・マーレイが、大活躍し、tintinや、ONE PIECEのような海洋冒険ものを想起したりするシーンもあって、やりたいことみんなやってるなと観ている方にわくわくさせる稚気に溢れている。これは、「天才マックスの世界」の拡大版といえようか。いろいろなサークルにのめり込むアグレッシブだけどどんくさいその少年の姿は、「ライフ・アクアティック」という作品の性質そのもの。全篇わくわくさせながら、最後はしっかりほろりとさせられるし。
音楽もいい! 才能ある映画監督は音楽の趣味もいい!*1

*1:デヴィッド・ボーイの楽曲をセウ・ジョルジがポルトガル語で弾き語りする!