「レイクサイド マーダーケース」


前売りを買ったときに2週間だけの公開というので、他にも一杯見たいのがあったんだけど、これを優先して見に行く。青山真治監督のこの新作は、ちょうど塩田明彦の「黄泉がえり」に位置するものなんだろうかと思っていたら、結構良く出来た作品になっていた。青とか紺とかで統一された画面の雰囲気もいいし、目がくらむような光の反射が時々挿入されまぶしさが不安を醸し出してるのも、それなりに面白い。でもこの映画の見せ場は、役者の配置の仕方と、役者のうまさにつきる。原作は東野圭吾の作品で、東野作品は結構読んでるんだけど、この作品は残念ながら未読で、原作の出来がどうなのかはわからないんだけど、モチーフというか、作品がとりあつかっている世界は多分に類型的で、ありふれた感じがする。お受験とか、それに携わる人々の狂気とか、セリフだけを思い浮かべると、実にありきたりな印象しかもてない。そんな類型的な設定やセリフを役所広司や、柄本明といった役者たちが演じることで、魂を吹き込んでリアリティを醸し出してる。この陳腐な物語をちゃんとした映画に仕上げていると思う。役者の顔ぶれがミステリー映画としてもなかなかのキャスティングで、例えば「アイデンティティ−」という映画にレイ・リオッタという役者が配役されてるほどのインパクトはないんだけど、みんな怪しいという点で絶妙。ちょっとばかり陳腐な演出があるのが残念だけど(ラストとか)、青山真治がこういう分かりやすい作品を撮ったというのは、評価してもいいんじゃないだろうか。