「黄色い目の魚」黄色い目の魚作者: 佐藤多佳子出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2002/10メディア: 単行本 クリック: 5回この商品を含むブログ (72件) を見る

凄い小説を読んでしまった。本の帯を見ると、一昨年度にかなりの話題をよんだ作品らしいのだが、そんなことは全然知らず、「16歳だった、すべての人へ」(そーだよ、そういうのが好きなんだよ!)というコピーをつけた佐藤多佳子著「黄色い目の魚」(新潮社)購入。
電車の中で第一話「りんごの顔」をよんでいたら、面白くてやめられなくなって、ホームに降りてからもしばらく読んでいたくらいである。家に帰ってから、第二話、本のタイトルと同名の「黄色い目の魚」を読んでいたら、途中から号泣してしまった。連作短編集ということなんだけど、全体を通してみると長編になっているという、以前紹介した若竹七海の「スクランブル」と同じ作りになっている。ただし、本編を読み終わってから、「あとがき」を見ると、この第二話の「黄色い目の魚」だけ、1992年に書かれた独立したれっきとした短編なのだ。勿論、それ以外のタイトルもみなぐっときて、泣ける作品ばかりなのだが、 この第二話の「黄色い目の魚」の完成度は突出している。つまりは、この短編を入れた単行本をつくりたいという作者の想いが10年後に実現したのが本書ということのようだ。ピュアでありすぎるがゆえに、全世界を(一人を除く)敵に回したかのように不機嫌な少女みのりの物語。実際、この少女が自分の子だったら、気が休まることがなくて大変だと思うけど、その嘘のなさに、その真っ直ぐな様に心をゆさぶられずにはいられない。
三話以降は、一話で登場した少年が現れ、高校を舞台に少女と少年が出会い、互いに惹かれて行く様を描いている。みのりにとって大切な人が2人(短編の時に描かれる人+少年)とも絵を描く人であるというのが、個人的にツボ。「イラストレーション」誌のチョイスとかでてきますし。その上、舞台が鎌倉、葉山。映画「青の炎」「ラヴァーズ・キッス」に続いて、またもや気に入った青春ものが鎌倉を舞台にしているとは!私的鎌倉青春3部作と名付けることにしよう。