「N.Y.式ハッピー・セラピー」(ねたばれ)

 優柔不断で気が弱くて、真面目で温厚そのもののデイヴは、ある日、飛行機で起こった理不尽なトラブルに巻き込まれ、怒りを抑えられない性質というレッテルを貼られてしまう。「怒り抑制セラピー」を受ける破目になった彼の前に現れた医師は、飛行機の隣の席で、事のきっかけを作った不愉快な男であった!
 デイヴに扮するのは、現代社会の中で懸命に温厚に生きてきた人間がひとたびキレたら止まらないという役をパターンを変えて演じ続けるアダム・サンドラー。「ウオーターボーイ」で彼が演じたのは、母親に溺愛された大人しい30男で、散々な屈辱を受けてついにキレたらとんでもない力を発揮し、アメフトのスタープレーヤーになってしまう!「「ウエディング・シンガー」でも結婚式当日に新婦にドタキャンされてキレてるし、ポール・トーマス・アンダーソンと組んだ「パンチ・ドランク・ラブ」は、7人の姉に常に干渉され、その抑圧から時々キレていた気弱な男が突然大〜恋愛して、滅茶苦茶パワフルになって、愛する人のためにしがらみ捨ててハワイに飛んでいく素敵な恋愛映画であった。
 よくぞこれほどあの手この手とバリエイションを変えてキレてくれるよなっていうぐらい、アダム・サンドラーの十八番の役柄で、だから、彼がキレてるシーンが出てくるとそれだけで笑えてくる。今回は、穏やかな彼を周りが挑発しまくって無理やり「キレやすい」人間に仕立て上げていくところが見もの。
 “キレる”ということがここでは“自己の開放”になってくるというストーリーで、観てるほうもとてもすっきり、鬱屈していたものから開放される気分になる。しかし、実際のところは、実社会ではなかなかキレること=自己解放はできない。ぐっと我慢することばかり。だからこそこういう映画が必要なのかも。アダム・サンドラーアメリカで絶大な人気を持っているわけもわかるような・・・。
 医師役のジャック・ニコルスンは怪演! 「シャイニング」みたいな表情をするんだけど、顔が2倍くらいになっているように見えた・・・。