「アダプテーション」(おもいっきしネタバレしているので、注意!)

監督スパイク・ジョーンズ、脚本チャーリー・カウフマンの「マルコヴィッチの穴」は確かにユニークな作品
だったが、私は、“どう、この作品、奇抜でしょ、ユニークでしょ、かわってるでしょ”っていうような作り手の
自意識を勝手に感じて、それほどのれなかった。最後まで、これほんとにキャメロン・ディアスなのかと思わせた
キャメロン・ディアスは面白かったけど。
 そんなわけで、スパイク・ジョーンズチャーリー・カウフマンが再びコンビを組んだ「アダプテーション」に
は半信半疑で臨んだのだが、これがもう滅茶苦茶な傑作であった。「マルコヴィッチ〜」の数倍の面白さ!
 ニューヨーカー誌のライター、スーザン・オーリアンという人が書いた「The orchid thief」(邦題「蘭に魅せ
られた男 驚くべき蘭コレクターの世界」)という本の映画化がまず前提にある。蘭コレクターにクリス・クーパー
ライターにメリル・ストリープが扮し物語が展開するのだが、実に興味深い話でひっぱられる。これまで、クリス・
クーパー(「アメリカン・ビューティー」の隣のおやじなど)をかっこいいと思ったことなんてなかったけど、
“前歯が一本もないのにもかかわらず、とてつもなくハンサムであるジョン・ラロシュを演ずる前歯のないクリス・
クーパーは非常に魅力的。
 でもこの映画にはもう一つメインで進行する話があって、それは、この映画の脚色をしているチャーリー・カウ
フマン(演じるはニコラス・ケイジ)が登場し、「The orchid thief」の脚色に苦悩する姿が描かれているのだ。
「花の魅力」を描いた映画にしようと努めたり、ダーウィンの進化論を必死で読んで、なんとか、本が描き出して
いる世界の本質を映像化しようとするけれど、脚色は混乱をきわめていき、書けない地獄におちいってしまう。
やがて、そんなカウフマンと、クリス・クーパーたちが接触することになるのだけれど、このあたりから、物語は
特においおい、どこまでやっちゃうんだよという何かに吹っ切れた人がとことん暴走していくような展開になり、
観てるほうは、あっけにとられるわ、呆れるわ、どこからが、本物で、どこからが嘘なのか、混乱してくるわ、
想像を絶する急展開に大笑いしてしまう!
 で、その実、この一見、めちゃくちゃな脚色が「The Orchid Theif」の本質を描く最高の脚色であることは間違
いないと観終えて確信するわけです。
 にしても、スーザン・オーリアンはよく許したな。だって、映画の中で、“寂しいだけの中年女!”なんて、のの
しられるんだぜ。
 スパイク・ジョーンズの演出も小気味よくて、とくに不慮の事故(2箇所あり)の唐突な暴力性にはっとさせられる。
なんでもスパイク・ジョーンズは編集に13ヶ月もかけたんだとか、いや、もう、完璧です。