「HERO英雄」

 中華圏の映画こそ大きなスクリーンでみたい。なぜなら、まずモブシーンの迫力。「HERO」なら、秦王のもとにジェット・リーが登場するシーンにみられるような、想像を絶するほどの壮大さはビデオでは堪能することはできない。
 次に長方形のスクリーンが、無限の空間に変わる瞬間、上へ上へと飛翔し、縦横無尽に駆け巡るアクションは小さな画面では物足りない。
 私がかって熱狂的な香港電影迷(ファン)だったころは、話題の新作がはいってきてもビデオスルーだったり、たまに映画館でやってもレイト上映だったりしたものだけれど、アジア映画が、こんな風に大手の映画館でかかって大ヒットするようになるなんて、本当〜によい時代になったものだ。
 香港映画の魅力の一つにそれが“スター映画である”ってことが上げられるだろう。「マトリックス」観にいった時、「HERO」の予告編が流れて、ジェット・リートニー・レオンマギー・チャンドニー・イェンチャン・ツィイーと出てきた時は凄い、興奮したものだ。今、日本の俳優でこれだけの面子をそろえようと思ってもちょっと思いつかない。
 中国の巨匠、チャン・イーモウは、そうした香港映画の持つ魅力をさらに贅沢にカラフルにパワーアップさせ、そして、格調高く描いてみせる。水辺の闘いのシーンの崇高さ。撮影はクリストファー・ドイル
 しいて不満をあげるなら、チャン・ツィイーの役が地味だったことか。最初の赤い服の時のキャラクターは好きだけど。あと、秦王が途中から中井貴一に見えてきて困った。