「さよなら、クロ」(ネタバレあり)

 松岡錠司監督、妻夫木聡主演、につられて観た(at心斎橋パラダイススクエア)。松岡
錠司監督作品は'98年の「ベル・エポック」以外は全て観てます。あと、'81年のPFF
入賞作の8ミリ作品「三月」を観てるのがちょっと自慢だったり(あれでファンになったわけで)。
動物ものはどちらかというと苦手だ。動物が危機に遭遇なんて場面が出てくると、こんな危ない
ことさせやがって〜!と憤ってしまう。動物が映画のために酷使されるのは非常にいやなのだ。
だが、「さよなら、クロ」のパンフによると、松岡監督はクロが弱っているシーンで「麻酔
などは、一切使わないときめていたから」と語っているように、大事に犬が扱われていたよう
だ。その姿勢が映画全体に流れる優しい雰囲気につながっているのだろう。
 冒頭、飼い主から事情があって、置き去りにされたクロが、誰もいない小屋をず〜っと覗
いているシーンで、もう泣けて、泣けて、全編、涙、涙。今でも思い出してまた、涙。
 でも、クロは幸せな犬だなあ。これは実話で、クロは飼い主に置き去りにされた後、長野県
松本深志高校で12年間のほとんどを過ごしたのだ。鎖にもつながれず、時には、授業中の
教室を訪ねたり、職員会議にも参加した。
 この大らかさは地域的なものや、松本深志高校の校風にもよるのだろうけれど、時代性も
大きいと思う。昭和30年代、40年代、日本人は、大らかで豊な心を持っていたのだな。
“現在”を舞台にした「仔犬ダンの物語」のヒステリックな大人たちと比較してしまった。
 役者も皆素晴らしい。妻夫木君は、本当に学生服姿が似合うね。