「ガラスのパンプス」後藤真希

ガラスのパンプス

ガラスのパンプス

ガラスのパンプス」という楽曲は、いわば後藤真希の王道を行く路線といってもいいと思う。長らく待たれていた“ゴマキ路線”ともいえるかもしれない。それくらい、この楽曲のイメージは、後藤真希にぴったりだし、今回のPVを見ても、まさにあるべきところにあるべき人がいるというすっきり感があり、なんだか気持ちをわくわくさせるものがある。曲のたたずまいが実に自然だ。
つんくによる軽快でかつ切ないメロディー、平田祥一郎のけだるさと疾走感がせめぎあうアレンジに、後藤真希の物凄く自然なボーカルが載る。力まず、素直にメロディーにのっかって、時に、ファルセットを巧に使いこなす。柔らかくさらっと歌っているようで、つんくが描き出すところの“大人な歌詞世界”を十二分にドラマチックに表現することにも成功している。このフィット加減はどうだろう!なんか、めちゃくちゃはまってません? 化粧ののりがいいとか悪いとかいうところののりのよさね!
そして、これは今の20歳の後藤真希だからこそ、出せる表現力だし、違和感のない世界なわけで、これをもう少し若い年齢でやると、どこか、やらされてる感が漂ったり、本人の迷いみたいなものも見え隠れしたと思う。歌唱ももっと力んだ不自然なものになっていたかもしれないし、つまりはやはりここまで待たなくちゃいけなかった!(例えば、17,8歳くらいで、実力派大御所ぽく現れてくる女性歌手が少なくないが、そういうのを観ていると、それは20歳越えても、30歳越えてからでも出来るじゃん、とか思ってしまう。まあ、そんなに長く活動する人は女性の場合は特に多くはないという現実はあるんだけど)ということなのだ。

いわば年相応という好条件を得て、漸く後藤真希が、ダンス・ミュージックというフィールドで立ち上がってきたということに歓びを隠せない。尤も、私はこれまでのごっちんの楽曲の多くも大好きだけれど。。

そうして、そんな自然さの中で、やはり言及してしまうのは、ジャケットの不自然さ。尤も、ネットで見た時よりも、実際に手にとって観た感じでは、これはこれでありと思えたけど、まあ、でもこの不自然さは、それが、どうみても30代くらいの円熟味を増した女性ジャズボーカリストのポートレイトのようなものを想起させてしまうからだ。
ごっちんはまだ二十歳なのさ。年相応というのはやっぱり重要なものなのだ。


そんなわけで、どんなジャケットだったらよかったのかちょっと考えてみた。

ソニークラークの「クール・ストラッティン」
凄く単純な発想だけど、こういうのがあってもいいんじゃない? これをそっくり真似たら、それは和田画伯になってしまうので、これをサンプリングにしながら、ガラスのパンプスをはいているごっちんの足をメインにいろいろとエフェクターやフィルターをかけて(?)全然別のものを作ればどう? とか。
本当に観てみたいのは、こんな感じ。

ハービー・ハンコックの「Invenntions & Dimensions」
路上にすくっと立つごっちん! 私はそんなカッコイイイごっちんが観たいの!


さてさて、しかし、そんな愚痴などどうでもいいと思わせるのが、C/Wの「LOVE缶コーヒー」だ。これがまた素晴らしい!サビの部分のホーンヒットがかっこいい! 太陽とシスコムーン、 T&Cなどもちょっと想起させるようなメロディー、ここでもごっちんの歌声は、実にスムーズで、楽曲のスピードに負けることはない。
AKIRAのアレンジは、洗練されていながら、どこか、わざとチープ感を漂わせている部分も感じられて、これはつんく♂が普段、その楽曲つくりに用いているものに近いような感じもするが、とにかくそんなこともひっくるめて最高!