「GOAL! STEP.1 イングランド・プレミアリーグの誓い」

フットボール(サッカー)をモチーフにした作品は結構制作されているけれど、実際、プロのフットボールの世界を選手側から描いた劇映画はあまりなかったように思う。記憶する限りでは、FIFAワールドカップフランス大会が終わって間もないころ、関西テレビで深夜ひっそり放映された「ドリーム・ゴール」(英’95)という作品が、シェフィールド・ユナイテッドの選手を主人公にしていて、ラスト、シェフィールド・ユナイテッドVSマンチェスター・ユナイテッドの決戦を描いていたんだけど、それくらいかなあ?


映画の中でのフットボールといえば、サポーターを主人公にして、フットボールが人生そのものになっているその熱狂振りを描くものが多かった。今回の「GOAL!」でも、朝からフットボール談義をしてる街のおじさんたちや、ニューカッスル・ユナイテッドのトライアウトを受けると語る主人公を暖かく迎える空港の係員などが登場、他にも試合中は仕事を拒否してパブに飛び込むタクシー運転手、看護士さんも、患者さんと一緒にベッドに腰掛けてテレビ観戦! そんな人々の高揚感が画面にみなぎり、見ている方も知らず知らずのうちにその渦に巻き込まれていく。


主人公のサンティアゴ・ムネス(クノ・ベッカー)は、幼い頃、家族とともに、生きるためにアメリカに不法入国し、ロサンジェルスで働きながら、地元のラテン系のチームでプレーしていた。その彼を偶然目にした英国人がプレミアリーグのトライアウトを受けることをすすめる。父との対立、祖母の支えを経て、英国に渡った彼に様々な試練が待っていた〜〜。というストーリーは、結構類型的で、物語の進み方もよくある青春もののパターン。それでも、なんだか、これまでの英国産のフットボールをモチーフにした作品と比べると、スケールがうんと大きく感じられるような気がするのはなぜだろう? 
 
 ニューカッスル・ユナイテッドの聖地「セント・ジェームズパーク」のFeverぶりをカメラが上空から見下ろすショットを始め、物凄く宇宙的な視線があるように思う。それは主人公がこれまでの英国の労働者階級の若者とは違うインターナショナルな設定になっているせいなのか、それとも、この「GOAL!」という作品が、三部作というでっかいスケールで制作されているせいか?? それだけ今のプレミアリーグが、大金の動く世界的なビッグビジネスになっているという背景ゆえなのか??


それはきっと、映画が、一青年のサクセス物語として留まるのではなく、そこに巻き起こるフィーバー・ピッチそのものを描きあげようとしているからだろう。
カメラは、主人公の傍らにいながらも、時に上へ上へと、時にサイドに回りこみ、ピッチの内外でのフィーバーぶりをあますところなく大きな視点で伝えようとする。
ニューカッスルの海辺の風景も、来るべき物語への期待感に満ちた迫力ある映像になっていて、そうした映像はダイナミックで心地よい。


肝心の主人公のプレーに関しては、私にはよくわからないのだけれど、最初に“バランスも悪いし、周りも見えてないが、それでもゴールを決める”という設定(言い訳?)がしっかり用意されている。そのあたりはちょっとご愛嬌だが、スピーディーな展開に粗探しなどどうでもよくなるだろう。


最後に、アメリカから渡ってきたばかりの主人公が、サポーターの老人たちに「サッカー」といって通じず、「フットボール」と言いなおして受け入れられるシーンについて。
イギリスでも、「サッカー」という言葉は若い人を中心にポピュラーなものになっているという内容の新聞記事を以前見たことがあるのだけど、やっぱりやっぱりまだまだフットボールなんだね! イギリスのそういう頑固な伝統=プライドはずっとずっと続いていって欲しいものだ。




ごっちん梨華ちゃんには、是非とも映画館の迫力ある映像で見て欲しい作品ですね〜。でも、後藤さんは、まっつーから借りた漫画本を読むのにも何ヶ月もかかりましたから、原作本をちゃんと読み終えるのでしょうか?「観てから読む」にしないと上映が終わってしまうのではないかと心配です。