「松本清張スペシャル・指」

このドラマで私が一番に見たかったものは、劇団員時代のまだ少女のあどけなさを残した弓子と、大女優になった貫禄ある弓子をごっちんがどう演じわけるかということでした。その点に関しては、脚本、演出において、弓子というキャラが、もともとは純真な性格だったのが、野心のためにだんだんと悪女になっていったという設定なのか、あるいは貧しさの中で育ったせいで、成りあがるために最初から他人を利用するつもりでいた性悪女だったのかが分かりにくい部分があったように思います。どっちでもない、中間の曖昧さというところなんでしょうけど、そのへんの人間関係を描くには少々2時間という枠は短かったかと思います。
なんてことを書きましたけど、上に書いたような点はあとになって冷静に判断すればそうだったな〜という事柄であって、実際、見てる時は、もう引き込まれて、引き込まれて、夢中で見ちゃいました。ごっちんが可愛くて可愛くて可愛くて、綺麗で、その表情一つ一つにでれ〜と見惚れて、星野レポーター、うざ!!他人の過去を暴こうなんて役柄に感情移入できるかい!(失礼。星野さんが嫌いなわけじゃないですよ。「さよならみどりちゃん」の星野さんは最高に可愛かったですから)、萬田さん扮する恒子さんがあまりにも不憫で泣けてきそうでしたし、高岡早紀さん扮する美穂のあまりの純愛ぶりと孤独感が胸に染み渡りましたし、こんな可愛い子を失うことのせつなさを思うと今でも泣けてきそうですわ。って感情移入しすぎ!マジヲタなんでそんな客観的に観れる訳も無く。でも実際、見終わってからのドキドキ感は寧ろ見る前よりも大きかったかもしれない。弓子というキャラクターに出会ってしまったことで激しく心持って行かれてしまった自分がいました。最悪の事態にもかかわらず笑顔で終わるラストは秀逸でした。決して不敵な笑みではなく、最悪の時に最高の気分を演じる女優としての最後の最高の笑み!
ごっちんは本当によく演じていたと思います。そりゃまあ、女優の経験もまだ浅いからつたない面も多々あったでしょう。でもね、圧倒的な存在感。そんなものは努力を積み重ねても出せるものではありません。上手な絵が皆素晴らしいかというと、必ずしもそうじゃないように、それを仕事にしていこうと思ったら、上手というのは寧ろ貶し言葉で、結局のところは人が持ってない何を持っているかということなのだと思っています。人が持ってない何かを今回私は女優・後藤真希の中にひしひしと感じました。まあ、自分は半端でないごまヲタなんでいくらこんな賛美の言葉を並べ立てても説得力ないんですけどね。
冒頭にのべたように、ストーリー的には時間が足りなくて描ききれなかった部分が多々あった作品ではありますが、下積み時代の弓子を演じるごっちんは、まだ幼い初々しさを漂わせ、スターになってからは心の中の邪悪な部分をクールな表情で表現し、幅の広さをみせてくれたと思います。
実際の後藤真希も幼さと大人っぽさを兼ね備え、そうした二律背反した要素を他にもいくつも持っている人なだけに、今回の企画はその両面を出せるという面で大変面白かったといえましょう。犬を殺す部分だけはちょっと、もうちょっと描き方があっただろうと思わせるものでした。「GiRL POP」誌でごっちんが子ども達に怖い人とおもわれたらどうしようという旨の発言をしていたのはこの点をさしていると思われます。倒れている犬が明らかにぬいぐるみだったのは、ちょっと救いかな〜(これで麻酔など使っていようものなら)。

「やんパパ」→「R.P.G」→「義経」→「指」。これらの後藤真希の出演作はそれぞれにその演技が認められての起用であって、決して事務所の力で取ってきた仕事ではないのは明らかでしょう。この「指」が新たな出会いを生めばいいな〜と願います。そうしてこの経験が歌手・後藤真希にとっても大きな財産になることを祈っています。
(B・G・M)HARCOの「世界で一番頑張っている君に」(ごっちんの曲と違うんかい!)