はてなダイアラードラマ百選

id:j0420sさんからバトンを引きついだ、「はてなダイアリードラマ百選」ですが、遅くなりましたがようやくアップできるようになりました。先週中にはアップなんて書きましたが無理でした。有言不実行でごめんなさい。
★「やんパパ」(2002年10月9日〜12月11日水曜22時放送 TBS系)
さんざん迷った挙句、「やんパパ」を選んだ。タイトル聞いただけで、別の頁に飛ぼうとしてません?大丈夫ですか、ではまずとりあえず、こちらをご覧ください。
●スタッフ:
脚 本 ■ 西荻 弓絵
プロデューサー ■ 稲田 秀樹
監 督 ■ 星田 良子、高橋 伸之
音 楽 ■ 溝口 肇
主題歌 ■ 『 ding-dong 』TOKIO
製 作 ■ 共同テレビ / TBS
●キャスト:
真淵 優作 長瀬 智也
小林 里早 加藤 あい
風見 薫子 後藤 真希
風見 桜子 石田 未来
風見 淳之介 笘篠 和馬
風見 ルリ子 古手川 祐子
風見 唯 藤谷 美和子
水島 美菜子 藤谷 美和子(二役)
●ストーリー:
憧れの超売れっ子漫画家・風見唯(藤谷美和子)のアシスタントをしている真淵優作(長瀬智也)は、アシスタント生活2年たっても一人前の仕事も出来ず、よく気が付く性格から雑用係りのようなことばかりしている毎日だった。アシスタントと先生の関係でいたはずが、優作は唯を愛し始めていることに気づく。同じ頃、唯も叶わぬ相手と分かりながらも、優作に惹かれ始めていた。出版パーティーの席で、自分の気持ちを隠すことが出来ず、優作は唯に告白をする。勿論、お金目当てなんかではなく、純粋に才能ある年上のバツイチ女を愛したからだ。ところが、唯はためらう。実は子供がいるのだ、それも3人!優作は驚きを隠せなかった。彼の親友・小林里早(加藤あい)はじめ周囲の人間は猛反対するが、優作の決心は固く二人は夫婦となった。
だが、その翌朝、唯が事故に遭いあっけなくこの世を去ってしまう。風見唯の姉(古手川祐子)からこの結婚はなかったことにしてくれと言われる優作だったが、漫画の編集者から風見唯が書き残した「スイートホーム」という漫画原稿を渡される。そこには、これまで仕事で構ってやることの出来なっかった子どもたちへの思いが切々と綴られていた。涙を流して読み終えた優作は、唯の思いを彼女の三人の子ども、薫子(後藤真希)・桜子(石田未来)・淳之介(笘篠和馬)に伝えるべく、三人のパパになろうと決意する。しかし、優作を待っていたのは子どもたちの強い反発だった。
優作のけなげな態度と真剣な想いがやがて子どもたちにも徐々に伝わり始める。しかし、実の父(杉本哲太)が数年ぶりに顔を出し、それをきっかけに優作たちの生活は一変してしまうのだった。優作は三人の子のパパになれるのだろうか?


それなりに豪華な顔ぶれの出演者のわりに、低視聴率にあえぎ、長瀬、加藤ファンの間ではどんな評判だったのかはわからないのだが、こと後藤ファンサイドでは、“面白くない”と散々愚痴られた作品。当時、私が巡回していたハロプロ系サイトでも褒めているところを捜すのが難しいくらい、評判が悪かった。未だに再放送されることなく、もはや「なかったこと」にされているような気配すらあるのだけれど、私自身は非常に好きな作品。途中、これはないだろうという安易な不幸のオンパレード(強盗が入ったり、火事になったり、あげくに優作が暴力団に拷問にあったりなど)など、脚本の荒さが目立つのは確かで、テレビ放映時に自分が残していた感想を見てみると、第5話の強盗騒ぎで優作が命がけで子どもたちを守るというエピソードにふれ、
「最初に防犯訓練やったばっかりに、本物の強盗が入ってもまたかよ、というリアクションのコメディータッチが、急に緊迫したサスペンスものなみのへたすりゃ、一家惨殺みたいな場面にかわるんだもの。すごいぞ「やんパパ」。さらに強盗が、映画「DOLLS」で、親分を撃つヒットマンことモロ師岡ですぜ。しかもこの手のドラマは大概、くくられていた紐は簡単にほどけたりするんだけど、ここでは最後の最後、優作がぶちきるまで、ほどけない。プロの仕事だ。のわりに、ヒットマンにそっくりな別人だったのか、一家は無事。久々にドキドキさせていただいた。物語全体には、感動したけど、このシーンは演出リアル過ぎ!」
とちぐはぐな演出についてチクリ。
さらに第6話では、
「今回はうまく行きかけていた物語が少し後退してしまって、なにか切なかった。なにか喪失感のようなものが私の心をもやもやさせる。なに、それは?それはね、今回は薫子の制服姿がなかったんだよ!!」
と自分の趣味に合わなかったということで怒ってます。
さらに、第7話では、
「これまでず〜っとこのドラマを絶賛してきたが、さすがに7話が終わった段階で一言言っておきたい。いつまで薫子の笑顔を封印するのだ!微妙な笑顔は確かにある。でも、もうそろそろ笑顔満開を解禁してもいいんじゃない? ごっちんの笑顔の素晴らしさをプロデューサーは知らないのか!」
とぶち切れています(笑)。
それでも、私がこのドラマが好きなのは、意外と深遠なテーマを含んでいるからなのだ。優作と三人の子どもたちは、戸籍上では親子なんだけど、唯が亡くなった今となっては、明らかに接点のない他人同然だ。さらにそこに優作の大学時代の友人里早(加藤あい)がからんできて同じ屋根の下に頻繁にやってくるといういわば、“擬似家族もの”というわけなのだけど、“擬似家族もの”にありがちな単純な“擬似家族礼賛”にならないよう心配りがなされている。薫子が口にする言葉「所詮他人なんだよね」が、物語のキーワードとなっている。若い優作にはこれからの人生がある、彼に甘えてしまってはいけないという気持ち、彼を迎え入れても、いつか去っていくのでは?その寂しさを味わいたくないという恐れを薫子役の後藤真希がぐっとおさえた演技でみせて、単なる愛情の押し売りドラマになるのをふせいでいる。エピソードは呆れるときもあるのだが、登場人物たちは案外に思慮深く、細やかな心理が丁寧に描かれているのだ。
 一方で血縁の因果というものも描かれ、どうしようもない実の父親に対して、泣いて怒って叫びつつそれでも薫子が家の権利書やなんだらを父親に全てあげてしまうのは、馬鹿でもこのままほっておくわけにはいかないという心理からなのだろう。絶対許せないはずの人間なのに、倒れれば、かけよってしまい、困っていれば助けてしまう。血のつながりというものの重さ=因果を感じずにはいられないエピソードだった(ちょっぴり映画「シャイン」などを思い出した)。
そうして第9話あたりからこのドラマのテーマらしきものが見えてくる。ってか遅い!つーの! もう残すところあと2回の放送ってところでわかってきてど〜するの!って感じなのだが(苦笑)、思うに、これは“才能のある親を持った子”、“才能を持った親が家族とどう対峙していくのか!?”という大変興味深いテーマを扱っている作品なのだ。そして、それは、“家族ってなんだろう”という大テーマにつながっていくものなのである。このドラマで最終的に描かれる“家族観”というのは、私が持つ理想にとても近いものになっている。優作は才能を認められ、才能を伸ばすチャンスを与えられるが、家族を犠牲にしてまで仕事で成功したくないと心から思っている。でも子どもたちは、彼が、自分の才能をいかしていく道をすすめるために、自分達はそれぞればらばらに生きていこうと決心する。子どもたちの思いやりと決心の固さにうたれて、彼は自分の才能で勝負する世界へと旅立っていく。「優作は離れていても私たちのパパだから」という薫子の言葉は、初めて優作をパパと呼んだという意味で感動的な台詞なのだが、そうした信頼が生まれてきたからこそ彼らはばらばらになることができるのだ。つまり、いつも一緒に一緒にと強制される家族は、常に一緒にいなければバラバラになってしまうことが怖い似非家族、、本当に心が通じていれば離れていても大丈夫なのが絆のある家族。互いに依存し過ぎて縛りつけるのではなく、相手の才能や夢や歓びを応援できるのが本当の家族、まあ私の理想なんだけれど(勿論、バラバラの方がいいというわけではない)。そうして、ここにおいて、反発していた母親の生き様に対しても子どもたちは理解し始めたということであり、優作の願いが叶ったということでもある。
んでもって、ラストの2年後っていう展開がまた泣けるのである。 誤解されてはいけないのは、結局仕事で成功するのが男の甲斐性というのを描いているドラマではないということだ。大切な人のために、どう生きてきたか、どう生きるのかという、そういうことなんだと思う。誰かのヒーローになってみたいじゃないか。
薫子役の後藤真希は一見親に反発して生意気そうな娘なのだが、実は、兄弟思いのしっかりものという繊細な役回りを自然な感じで演じていたと思う。里早役の加藤あいは、コメディエンヌ的役回りを元気に明るく演じて、暗く落ち込んでいきそうな物語を快活なものに瞬時に変える力があった。そして何より優作役の長瀬智也が素晴らしかった。一生懸命な姿は確実に観ているものの心を打ち、常に誠実に、子どもたちに優しくぶつかっていく。その真摯な姿、この温かいキャラクターが似合うのは彼しかいないと断言してもいい。
TOKIOの主題歌「ding-dong」は名曲。 クリスマスソングといっても良い曲だろう。ちょうど時期もクリスマスシーズンの今、この歌をゆっくり聞いてみるのもいいかもしれない。

さて、次のバトンですが、id:da-yoshiさんにお願いしたいと思います。今さら私が紹介するまでもないのですが、BoA、やハロプロ、K−POP、国内産ドラマ、韓国ドラマ、映画と幅広いジャンルがとても誠実な言葉で語られていて愛読させてもらってます。どうかどうかよろしくお願いいたします。