「死に花」(ネタバレあり=ラストばらしてますのでご注意)

id:yukodokidoki:20040512を観させていただいて、こりゃあ行かなきゃと行ってまいりました。高級老人ホームで、悠悠自適な暮らしをしている老人が、亡くなった友人の意志をうけつぎ、銀行強盗をするっていうお話なんだけど、非常に計画的に始められて、また、老人たちが穴を掘っていくのに、地道にこつこつとやっていく。その困難さと彼らの根気に手に汗握りながら見守ってたんだけど、突如、スケールがでかくなって、そのスケールのでかさに思わず、大笑いしてしまった。あの画が笑えるのだ。あの画みるだけでも映画を見にいく価値はある!
 にしても、本当に、犬童一心はうまくなったなあ。俳優たちがみな実に楽しそう。松原智恵子自身もこんな色っぽい役柄が回ってくるとは思いもしなかっただろう。だがなんといっても凄いのは山崎努。彼は、これまでは、例えば「GO」で若いものもよせつけないほど強い男を演じたように、いわゆる「老人」らしい「老人」を演じてはこなかった。ここでも、彼は、ジョギングや、水泳、エクササイズマシンで、体を鍛えている一見タフガイという役柄である。若い女性にも憧れられる存在である。しかし、いつもと違うのは、彼が運動後、ぜーぜー、はーはー、非常にくるしそうにする場面が執拗に描かれること。しかも、男らしいイメージの彼が、男としての機能がうまくいかないという場面まで描かれ、ラスト近くには、痴呆の症状まであらわれてくる。これはもしや、山崎版「アバウト・シュミット」なのではないか?「アバウト・シュミット」っていうのは、これまで「粋な中年男」であり続けたジャック・ニコルスンが、初めて、「老人」を演じた映画。 とまあ、そんな思いでみていたら、ラスト、子どもにかえってしまった山崎が、実に生き生きと、そして、これまでの“山崎努”のイメージを一遍に取り戻すような笑顔を見せるのである。まさにこの笑顔をみせるために全編があったような最高の笑顔。観ているものの胸を射抜くような笑顔。ああ、観てよかった。