NHKドラマ「R・P・G」(ねたばれ)

宮部みゆきの原作は、宮部作品の中では比較的短いし、舞台も限られているので、そのまま忠実に映像化されるのだろうと思っていたら、意外と変更がなされていたなというのが第一印象。原作の一美が、諦めてしまう恋人に「まだ頑張れる!」と電話してもがいているシーンが好きだったので、そういう後藤真希の演技も見てみたかったなあ。ドラマの方は、原作の“積極的な殺人者”でなく“偶然の殺人者”としての一美という面が強調されている。犯人は誰だというフーダニットの面白さよりも、もう一つの仕掛けのほうが、あとで我々をあっといわせる仕組みになっていて、この構成は悪くない。
 原作は、宮部作品にしては短いとかいたけれど、実際、彼女の作品にしては、まだ描き足りない面が一杯あったんではないかと思わせる、とりあえず、面白いけれど、宮部作品の中では快心の出来ではないなというのが、初めて読んだ時の感想だった。
私が彼女の作品で驚かされるのは、出てくる登場人物への責任のとり方だ。物語の面白さを追求するあまり、みずからが生み出した不幸な人物にいちいち心配りしてられないって作品が普通な中で、宮部みゆきは、自分が生み出した人物の不幸も、数奇な運命もどんと責任負うよというのが感じられるのだ。例えば「火車」のヒロインなど、まあ、これでもかという不幸のオンパレードだけど、読んでて不快じゃない。作者の厚いまなざしが感じられるから。「理由」は、そう言う意味で、宮部作品の集大成という面があって、事件に関連する人々に関して、全ての人の人生が、延々と語られる作品だった。
 ドラマ「R・P・G」は、原作で、宮部が描ききれなかった部分を補足するような作りになっていると思う。犯罪を犯してしまった少女の心のケアという面にちょっとくどいくらい焦点があてられているのも、宮部作品の“自らが生み出したキャラクターに責任を持つ”という特徴をうけつぐものだといえる。ドラマ化されたことで、ひとつの宮部ワールドが立派に完成したといってもいいんじゃないだろうか。
 ごっちんにとっては今回の役は「もう怒っているばかりの役はいや」といった部類にはいるものだろうけど、やっぱりね、こういう役をやらせるとうまさが際立つ。錚々たる役者の方がたとの共演で、いろいろ学んだ事も多いでしょう。ファン(ヲタですが)としては、いろいろな後藤真希をみたいけど、クールなごっちんっていうのもやっぱりいいもんだよ。
ヲタでない方の感想
「春雨日記」  http://d.hatena.ne.jp/j0420s/ 11月22日の日記
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