[映画]「ターンレフト・ターンライト」(原題:「:向左走・向右走」)[完全ネタバレしてますのでご注意ください。]

天六ユウラクザにて鑑賞。最近、無機質なシネコンとか綺麗なミニシアターばかりで映画みてるせいか、ちゃんと職人さんの書いた手書きの看板がかかっている古いタイプの映画館はなぜか嬉しい。ここにくるのって、十年ぶりくらいになると思うんですが、全然かわってなかった。
ジョニー・トーとワイ・カーファイの共同監督作の香港映画ですが、製作はハリウッドのメジャースタジオ、ワーナーブラザースで、舞台は台湾の台北となかなかインターナショナルです。男女が出会って、すれ違ってすれ違ってというあら筋だけ語ればある意味王道のラブストーリーなんですが、これが面白い。
 まず、冒頭、信号機を捕らえたカメラが、そっと下がっていくと、傘、傘の並、カメラがさらにひくと、横断歩道のこちら側(this side)のまた傘傘の並が映し出される。この上空からのショットは、まるで運命の天使が見下ろしているようなそんな錯覚を見ているものに与えます。運命で、結ばれているかいないのか、問題の二人は、ここでも直ぐ近くにいます。一人は、緑の傘をもう一人は赤い傘を持って。あとは、みんな黒い傘なので、とても分かりやすくて鮮やかに二人を映し出します。一人はうれない音楽家金城武、一人は、翻訳家のジジ・リョン。二人はアパートの隣り同士に住んでいるのにお互いに気付いていません。彼は右に曲がるクセがあり、彼女は左に曲がるくせがある、二人が同時に反対方向にかけだしていく様子をカメラがちょっと上の方からとっているショットが躍動感に溢れていてワクワクしてしまいます。そんな出会わないはずの二人が出会う。前半のここまでは、とてもロマンチックな展開で、うっとりさせられます。でもこの映画が凄いのはここから。がらりと雰囲気がかわって、恋の邪魔者どもが登場するのですが、これがまあ、濃い、濃い、ロマンチックコメディーが、スラップステックコメディーに様変わり!主役の二人の周辺をうろうろする脇役男女が、見事に厚かましくて、展開的には往年のハリウッド映画の黄金パターンなのですが、あまりのパワフルさに見ながらひきまくってしまいます。ジョニー・トーとワイ・カーファイはアンディ・ラウ主演の「ニーディング・ユー」も共同監督していますが、あの作品も、普通に撮っていれば洒落た都会派コメディーになるのに、なぜか突然「アンディ・ラウの逃避行」のパロディが出てくる展開で、驚かされましたが、今回もただのオシャレな映画にはなりません。ここがこの映画の評価の分かれ目になるのかもしれませんが、私は結構好きですね。問題の脇役のテリー・クワンもエドマンド・チェンもなぜか憎めなくて、最後まで無責任で最高です。(笑) この二人と対比しておろおろするだけの金城武もジジ・リョンもまたなぜか初々しくて良い感じなのです。きわめつけはラストです。ここまで強引な展開があろうとは!見事な力技です。いやあ、運命ってきっとそうなんだよと妙にというか力ずくで納得させられるというか、これが香港映画でしか出来ない面白さなのだなあ〜。