「てるてる家族」

15日の朝日新聞(大阪版)の夕刊に吉本興業の子会社イエス・ビジョンズが大阪発の映画製作を始めたという記事が載っていた。その記事を少し引用する。ちょっと長くなりますが…。
“年明けには第2弾「大阪プロレス飯店」も後悔予定。プロレスの試合をみせる飲食店で、一山あてようと考える香港の兄弟の物語。「もうかりまっか」「ぼちぼちでんな」「まいど」の3語が飛び交い、広東語のセリフには関西弁の字幕をつけた。通天閣をバックに香港と日本の出演者が騒動を繰り広げる。この試みについて関西大学講師(映画学・社会学)の武部好伸さんは「2本とも(もう一本は「ガキンチョ★ROCK」という作品)いわゆる『大阪らしさ』は出ている。でも、描かれる大阪人はみんな品が悪くて元気よくて三枚目。こんな調子で何本も作られたらかなわん」と苦笑い”さらに、“武部さんはむしろ最近では、田辺聖子原作の恋愛映画「ジョゼと虎と魚たち」や、少年の性の目覚めを関西弁を交えてリリカルに描いた「ごめん」と言った作品に「素の大阪」を感じる、という。”と続ける。
“誇張した大阪弁”とか、“お笑い”とか、“ど根性商売もの”とか、そんな大阪の物語はみたくないと一番思っているのは、大阪に住む人間ではなかろうか。もっと普通の大阪の物語がみたいのだ。「〜でんがな」なんてのじゃなく、普通の大阪のイントネーションで語られる物語がみたいのだ。
 大阪府池田市を舞台にしたNHK朝ドラ「てるてる家族」が始まる時、大阪の北摂地域のお話は珍しいので、すごく期待する半面、不安もあった。これまでの大阪物と同じような作りでやられるとイメージ違ってくるんだけどな。でも、はじまると面白さに引きずり込まれた。なによりも、大阪、大阪って言っていないのがいい。へんに大阪を舞台にしているということを意識せず、大阪の暮らしが、自然な感じでそこにあるところがいい。ちょっとした失敗談をみんなで笑い飛ばす元気がある。笑いに包まれながら全然下品じゃない。お父さんのちょっとした出来心での浮気とか、娘が東京に出て歌手をめざすことへのお父さんとの葛藤とか、ちょこちょこっとした事件はあるけれど、基本的にここまで“ほのばの明るい物語”で話を進めていくには、波乱万丈の物語を作るよりもセンスが必要だ。原作がしっかりしていることも大きいのだろうが、脚本が実によく出来ている。テンポもいいし、省略の仕方もうまい。そして、なにより、石原さとみ大阪弁がうまい! 岸谷吾朗などが、時々ちょっと違うのでは、という発音をしている時があるのに、石原さとみは本当に東京の人なの?って問いただしてみたくなるくらい自然な感じで聴いていて非常に心地いい。へんな大阪弁使われると凄くいい作品でもがっかりするものだから、これはとても嬉しいことなのだ。前述の映画「ごめん」のヒロインだった櫻谷由貴が、子役時代の夏子役で出ていて、そこでも存在感を示していた。朝ドラをこんなに楽しみに見ているのは「ひらり」以来である。そういや、「ひらり」の石田ひかりと、石原さとみはどことなく似てやしませんか?